「うちは平屋だし、段差なんてない」——そう思っていても、転倒は起きます。実ははっきり見える階段より、“見えにくいわずかな段差”のほうが危険。なぜなら、人は見える危険には備えられても、見えない危険には備えられないからです。

なぜ「小さな段差」ほど危ないのか

階段は、はっきり段差とわかります。だから人は身構え、手すりを使い、慎重になります。ところが——

数mm〜数cmの段差や、ほんのわずかな傾斜は視覚で認識しづらい。すり足ぎみの歩き方だと、その小さな出っぱりにつま先が引っかかって転びます。本人は「何もないところで転んだ」と感じますが、実際には“見えない段差”があったのです。

実際、家庭内の転倒・転落は、階段のような大きな段差よりも“同じ平面上”で多く起きていることが国の調査でも示されています。だからこそ、見落とされがちな小さな段差こそ対策が必要です。

家の中で本当に危ない7か所

場所なぜ危ない
① 敷居・部屋の境目数cmの段差。すり足で引っかかる
② 絨毯・マットのヘリめくれ・厚みでつまずく、滑る
③ 電源コード類足に絡む。見落としやすい
④ 玄関の上がりかまち段差+方向転換で不安定
⑤ 廊下→洗面・浴室の床の切替わずかな高低差+濡れ
⑥ 畳と床の境沈み込み&わずかな段差
⑦ スロープ・床のわずかな傾斜傾きでバランスを崩す

「気をつけて」では、転倒は防げない

家族はつい「ちゃんと足元を見て」と言いがちです。でも、注意力にずっと頼るのは無理があります。リハビリの基本は「本人の注意」より「環境から危険を消す」こと。

  • 段差をなくす(スロープ・すりつけ板で“すりつける”)
  • コードをまとめる・固定する
  • マットは滑り止め+めくれ防止、または思い切って外す
  • 足元を照らす(夜間はセンサーライト)
  • 履物を見直す(スリッパ・靴下は滑る。軽い介護シューズが安全)
歩くときは、少し先(進む方向)に視線を向けるのが基本です。理由は2つあります。
① 体が崩れにくい:下を見続けると、首が前に曲がる→体幹が前に屈む→重心がつま先寄りになり、転びやすくなります(リハビリでいう運動連鎖)。
② 周りに気づける:うつむいていると、信号・近づいてくる人・走ってくる子ども・目の前の障害物に気づけません。少し先を見ることが、ぶつかりや“とっさの転倒”を避けることにもつながります。
そのうえで、足元の危険は“あらかじめ環境から消しておく”のが大切です。

歩行介助は「立ち位置」で決まる

付き添うとき、手を引っ張る・急がせるのは逆効果。引かれると体が後ろに残り、かえってバランスを崩します。

基本の立ち位置は、杖と反対側(弱いほう)の、やや後ろ。こうすると、ふらついたときに腕を支えたり、もたれてもらったりできます。前から引くのではなく、横後ろから“いつでも支えられる”構えが安全です。

💬 こんな声かけを 「早くして」より「準備できたら、一緒に行きましょうか」。歩き出しは、本人が“行く気”になったときがいちばん安全です。急かす声が転倒リスクを上げます。「ゆっくりでいいですよ」——このひとことが、いちばん有効な転倒予防になります。
転倒は「寝たきりの入口」。高齢者の転倒は、大腿骨や腰の骨折につながりやすく、それを境に一気に動けなくなることがあります。また片麻痺の方は麻痺側を支えにくく健側(非麻痺側)に重心が偏りやすい、パーキンソンの方は前のめり(前方重心)になりやすいなど、病気によって転びやすさの“クセ”が違います。当てはまる場合は、自己流で進めず、ケアマネジャーやリハビリ専門職に一度みてもらってください。
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※杖・歩行器は体に合わないと逆に危険です。サイズ・種類は専門職と相談を。多くは介護保険のレンタル対象です。当ページには広告(PR)を含みます。

🗣️ りはすけのひとこと 私は現場で、「歩く練習をしましょう」とはあまり言いませんでした。「ちょっと外の空気、吸いに行きませんか」——歩くことを目的にせず、外に出ることを目的にする。そのほうが、足が出るんです。
歩く"力"より先に、歩きたい"気持ち"。急かさず、責めず、今日一歩分だけ一緒に。転倒が怖くて閉じこもると、足の力は落ちていきます——歩くことが、歩ける体を作ります。

まとめ

  • 危ないのは階段より“見えにくい小さな段差”
  • 「気をつけて」より環境から危険を消す
  • 目線は少し先(進む方向)。下を見続けない/足元は事前に安全化
  • 介助は引っ張らず、弱い側のやや後ろで支える
  • 病気ごとの転びやすさのクセは専門職に相談
この記事はリハビリの一般的な考え方をお伝えするものです。歩行の状態や安全な介助はご本人によって異なります。ふらつき・転倒が続く場合や病気がある場合は、医師・ケアマネジャー・担当のリハビリ専門職にご相談ください。