ベッドから車いすへ、車いすからトイレへ——この「乗り移り(移乗)」は、在宅介護でもっとも腰を痛めやすく、事故も起きやすい場面です。でも、いちばん大切なのは“正しい持ち上げ方”を覚えることではありません。
「正しい移乗の手順」を、ネットで覚えないでください
少し意外かもしれませんが、移乗には「これさえやればOK」という共通の正解手順はありません。その人がどれくらい自分で動けるか(自立〜全介助)でやり方がまったく変わるからです。
体の状態に合わない方法を見よう見まねでやると、転倒や骨折、介助者のケガにつながります。だからこの記事は手順書ではなく、「考え方」と「整えるべき環境」をお伝えします。具体的な方法は、ご本人を見ながら専門職(理学療法士・作業療法士・ケアマネジャー)に教わるのが大前提です。
まず「環境」を全部整える
移乗が一気に楽で安全になるのは、力ではなく環境です。動く前に、整えられるものはすべて整えます。
- 高さを合わせる:ベッドと車いすの座面を同じ高さに(電動ベッドが便利)
- 距離を近く・角度をつける:車いすをすぐ隣に、少し斜めに置く
- じゃまな物を外す:車いすのひじ掛け・フットレストは上げる/外す
- 足が床につくか:足が浮くと踏ん張れない。ベッドを高くしすぎない
- ブレーキ・シーツ:必ずブレーキ、シーツがずれないように
「持ち上げない」が鉄則
抱え上げる介助は、たとえできても見えない代償を残します。
| 持ち上げると…(相手) | 持ち上げると…(あなた) |
|---|---|
| 皮膚が裂ける・関節を痛める/本当に支えられているか分からず崩れる | 腰を痛める/支えきれず2人で転倒 |
基本は、本人の前傾(おじぎ)の力を使い、回転を小さく。足りない分だけを、ボードやベルトで“滑らせる・支える”。抱え上げるのではありません。
💬 こんな声かけを
「さあ移りましょう」より「今から少し体を傾けますね」。不安のある方に突然動かすのは禁物です。声をかけてから・確認してから動き出す——それだけで、体の緊張がすっとほどけて、介助がぐっと楽になります。
「自分を守ること」が「相手を守ること」です。介助するあなたが腰を壊して倒れたら、介護そのものが続けられなくなります。無理だと感じたら持ち上げない。道具を使う。人を頼る。それは正しい判断です。膝折れ・体が崩れる・急に重く感じるときは、自己流で続けず専門職に相談してください。
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🗣️ りはすけのひとこと
移乗は、私がこの仕事でいちばん大切にしてきた動作です。だからこそ言えます——頑張り方を変えるより、環境と道具を変えるほうが早い。
「自分が腰を痛めたら、介護が続けられなくなる」。頭ではわかっていても、目の前で困っている親を見ると、つい無理をしてしまう——その気持ちは、よくわかります。でも、あなたの腰は、あなただけのものではありません。守ってください。そのための道具であり、専門職です。
「自分が腰を痛めたら、介護が続けられなくなる」。頭ではわかっていても、目の前で困っている親を見ると、つい無理をしてしまう——その気持ちは、よくわかります。でも、あなたの腰は、あなただけのものではありません。守ってください。そのための道具であり、専門職です。
まとめ
- 移乗に万能の手順はない。方法は本人を見て専門職に教わる
- まず環境を全部整える(高さ・距離・ひじ掛け・足元・ブレーキ)
- 持ち上げない。前傾の力+道具で“滑らせる・支える”
- 自分を守ることが、相手を守ること。無理しない
この記事は一般的な考え方をお伝えするものです。安全な移乗方法はご本人の状態によって大きく異なります。具体的な方法は、必ずご本人を見たうえで医師・ケアマネジャー・理学療法士・作業療法士にご相談・ご指導を受けてください。