「股関節・膝・足首を90度に座らせましょう」——よく聞く言葉です。でも、リハビリの現場で本当に見ているのは角度ではありません。その姿勢から、自分の力で立ち上がれるか。ずり落ち・お尻の痛み・床ずれも、すべて“座り方”でほどけます。

「90度」が正解とは限らない

長く座っている方は、知らないうちに骨盤が後ろに倒れた「ずっこけ座り」になりがちです。この姿勢だと、たとえ膝が90度でも——

  • 立とうとすると、お尻が前にずれて滑り落ちる
  • 上半身を前に倒せず、立ち上がりの“おじぎ”ができない
  • 同じ場所に圧がかかり続け、お尻が痛い・床ずれの原因になる

つまり大事なのは角度そのものではなく、「ずれずに、前に倒せて、足の裏で踏ん張れる座位かどうか」です。

“動ける座位”の3つのチェック

  1. 骨盤が立っているか。背もたれと腰のすき間が大きいと骨盤が倒れます。腰を支えて骨盤を起こします。
  2. 体を前に倒したとき、お尻がずれないか。ずれるなら座面が滑りやすい状態。立ち上がりも不安定になります。
  3. 足の裏に“体重がのる”か。足が床についているだけでは不十分。前傾したときに足裏へ重心が移せて、はじめて立てます。
「足の裏がついている」と「足の裏に体重がのっている」は別物です。リハビリでは後者(足底荷重)を見ています。椅子が高すぎて足が浮いていないか、確認してみてください。

ずり落ち防止と「床ずれ」は、両立させる

ここが在宅介護でつまずきやすいポイントです。

やりがち起きること
滑り止めでガチッと固定するずり落ちは防げるが、動けず同じ場所に圧が集中→床ずれ
柔らかいクッションで沈める痛みは減るが、沈み込んで立ち上がれない

答えは「固定」ではなく、姿勢を保ちつつ、ときどき自分で体重をずらせること。お尻を左右に少し浮かせる、骨盤を前後に動かす——こうした除圧ができると、ずり落ちも床ずれも防げます。

目的でクッションを選ぶ(ここを間違えない)

クッションは「なんでもいい」わけではありません。目的が逆だと逆効果です。

  • 立ち上がりを楽にしたい → やや硬め・沈み込まないクッション(力が逃げない)
  • 長く座る・床ずれを防ぎたい → 体圧分散クッション(適度に沈んで圧を散らす)
🔍 選び方のめやす(作業療法士の視点)
  • まず「目的」をひとつに。立ち上がり重視=やや硬め/長く座る・床ずれ予防=体圧分散。両立は難しいので、いま困っているほうを優先します。
  • 沈み込みすぎに注意。お尻が深くくぼむと、立ち上がりの最初の動作(お尻を前にずらす)ができなくなります。長く座る方ほど分散は大事ですが、「立てなくなるほど沈む」は行き過ぎです。
  • 高さは「足の裏」で決める。クッションが厚すぎて足が床から浮くなら、それは合っていません。椅子側が高い場合は足台という手も——足の裏で支えられると座りが安定し、お尻への圧も減ります。
  • クッション自体がずれるなら、下に滑り止めを。動かしているのは本人ではなく“姿勢”のことが多いんです。座面とクッションの間に滑り止めシートを一枚かませると落ち着きます。
  • 素材は進化しています。ハニカム構造(蜂の巣状)やジェルなど、圧を分散しながら沈みすぎない素材が増えました。
  • 買って終わり、にしない。クッションは使ううちに“へたり”ます。つぶれたままのクッションは効果が落ちるので、ときどき厚みと弾力を確認してください。
  • クッションは“座らせ方”とセットで(ポジショニング)。同じクッションでも、骨盤の起き方・足の位置・背もたれとの関係で効果が変わります。道具を置くだけでなく姿勢ごと整えるのがポジショニング——一度、担当の専門職に「この椅子でのいい座り方」を見てもらうと、道具が何倍も効きます。
  • ⚠️ ずり落ちは、本人が気づかないことがあります。見守りに加えて、腰を支える背もたれ(ランバーサポート)も姿勢の保持に役立ちます。
  • ⚠️ 床ずれ・痛みがすでにある場合は、自己判断せず医師・看護師・担当の専門職へ。気になる商品があったら「こんなのありましたけど、どうですかね?」と担当のリハ職・ケアマネさんに聞いてみてください。
  • 🔎 探すときの検索ワード:立ち上がり重視なら「高反発 座面クッション」/床ずれ予防なら「体圧分散 クッション ジェル」「ハニカム クッション」。通販でも店頭でも、この言葉で聞けば近いものに辿り着けます。
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体圧分散クッション

お尻の圧を分散し、痛み・床ずれ予防の助けに。長く座る方向け。

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ランバーサポート

腰のすき間を支えて骨盤を立てる。ずっこけ座り・ずり落ちを防ぐ。

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※「立ち上がり重視=硬め」「床ずれ予防=体圧分散」と目的で選び分けてください。すでにできてしまった床ずれは自己判断で対応せず、医師・看護師にご相談を。当ページには広告(PR)を含みます。

褥瘡じょくそう(床ずれ)が気になるとき。赤みが消えない・皮膚が破れている場合は、すでに医療的なケアが必要なサインです。クッションで“予防”はできても“治療”はできません。必ず医師・看護師・ケアマネジャーに相談してください。——病院や会議で「ジョクソウ」という言葉が出たら、この床ずれのことです。

まとめ

  • 大事なのは「90度」より“立てる座位か”
  • チェックは①骨盤が立つ ②前傾でずれない ③足裏に体重がのる
  • ずり落ちと床ずれは「固定」でなく除圧(自分でずらせる)で両立
  • クッションは目的で選び分け(立ち上がり=硬め/床ずれ=体圧分散)
この記事はリハビリの一般的な考え方をお伝えするものです。適切な座位や用具はご本人の状態によって異なります。床ずれ・痛みなどの症状は、医師・看護師・ケアマネジャー・担当のリハビリ専門職にご相談ください。
参考:日本褥瘡学会「褥瘡予防・管理ガイドライン」(体圧分散用具の使用)/高齢者のシーティングに関する資料(フットサポート・足底支持と圧分散、骨盤後傾の管理)