特別な自助具を買わなくても大丈夫。家にある“なじみの物”が、そのままリハビリの道具になります。お玉、はし、タオル、カラオケのマイク——暮らしの中に、訓練は埋まっているんです。

家にある物の“動き”を借りる

現場でできても、家でできなければ意味が薄い。だから私は、その人の暮らしに合った“代わりの道具”をさがして差し出します。

  • お玉:ピンポン玉やお手玉を運ぶ=巧緻動作こうちどうさ(指先の細かい動き)・両手の協調・注意・体幹
  • 新聞紙:ちぎる・丸める=手指の運動
  • ペットボトル(水入り):軽い重りの代わりに

道具を買うのではなく、家にある物の“動き”を借りる。「運ぶ・つかむ・洗う・持つ」——生活の動きが、そのまま訓練の名前になります。

タオルは、「入浴のリハーサル」

タオルで、肩から下肢まで“体を洗う想定”の動きをします。肩の動く範囲・体幹のひねり・手を伸ばす・両手を交互に——車いすの方でも、体幹を動かせます。

これはただの「タオル体操」ではありません。お風呂という生活動作のリハーサル。家のお風呂で本当に洗えるようになるための練習なんです。

カラオケのマイクは、隠れた保持訓練

マイクを口元に持ち続けるでしょう。歌っているあいだじゅう、それが上肢の保持訓練になっています。ときには立って歌えば、立位の練習にも。本人は「歌っているだけ」。楽しさの裏で、保持・持久力・呼吸(歌うこと自体が呼吸の運動)が回っているんです。

⚠️ よい訓練ほど、リスクの顔も持ちます
たとえば「はしで、おはじきをつまむ」のは、食事の動きに直結する、とても生活的な訓練です。でも——認知症のある方には、本当に気をつけてください。おはじきは食べ物の形に近く、「気づいたら口に運びそうになっていた」ということが起こります(誤飲ごいん異食いしょく)。機能的にはよい訓練でも、必ず見守りを。食べられない物を使う訓練は、専門職に相談してから行ってください。

「はしとって」の、その一言

家にある物でやる意味は、節約だけではありません。回復のサインも、家の中の何気ない一言で返ってくるからです。

昨日まではスプーンだったのに、なぜか今日、お母さんが「はしとって」と言った。——それは、「握力が上がりました」という成果表よりずっと雄弁です。機能の回復も、自信の回復も、食事の楽しみが戻ってきたことも、その一言が全部告げている。台所の会話が、いちばんの評価表なんです。そしてそれに立ち会えるのは、家族だけです。

🗣️ りはすけのひとこと どんな動作も、リハビリにつなげることはできます。それはつまり、「生活をリハビリにする視点」=前向きになれる視点でもあるんです。
高い道具を買う前に、まず家の中を見回してみてください。お玉も、タオルも、マイクも、もう“なじみの道具”。本人が抵抗なく手に取れるのが、いちばんの強みです。合うかどうか・安全かどうかは、いちばん近くで見ている専門職に相談を。

まとめ

  • 特別な自助具を買わなくても、家にある物が道具になる
  • お玉=運ぶ/タオル=入浴のリハーサル/マイク=保持訓練
  • “なじみの物”だから、本人が抵抗なく使える
  • ⚠️ はし+おはじき等は誤飲注意。認知症の方は必ず見守り・専門職に相談
  • 回復のサインは「はしとって」のような日常の一言で返ってくる
この記事はおうちリハの考え方をまとめた一般的な読みものです。道具や運動が合うかはご本人の状態によって異なり、誤飲・転倒などのリスクもあります。導入前に、担当のリハビリ専門職・ケアマネジャーにご相談ください。