「家に帰る」と言って聞かない。もういないはずの人が、そこにいるように振る舞う。同じことを、何度も。——次に何が起きるか、予測ができない。その苦しさに、押しつぶされそうになる。それでも、「違うでしょ」とは、言わないでほしいんです。

「次に、何が起きるか分からない」——その苦しさ

認知症のある方との関わりは、本当に難しい。戸惑って、悲しくなって、つい強い言葉が出てしまう。それは、あなたが冷たいからではありません。それだけ、大切に思ってきたからです。まず、その苦しさに、そっと寄り添わせてください。

否定したくなる、その気持ち

「違うでしょ」と、否定したくなる。その気持ちは、当然のものです。事実と違うことを言われれば、正したくなる——それだけ、ちゃんと向き合っている証でもあります。

でも、私はご本人に「違いますよ」とは言いません。その代わりに、その方の世界を想像します。これまでの生活歴や思い出を、ご家族にお聞きしながら——「もしかしたら、こう見えているのではないか。こう考えているのではないか」と。

その方が見ている世界は、私たちとは違う時代なのかもしれません。でも、その方にとっては、それが“本当の世界”なのです。だから、否定しない。

否定されると、人は不安になり、心を閉じてしまいます。否定するより、その世界を「そうなんですね」と受け止める方が、ずっと届きます。正しさより、安心を。

生活歴という、地図

関わりの鍵は、生活歴です。何をして働き、どこに住み、何が好きだったか。それを知っていると、本人の語りを「その人にとっての本当のこと」として受け取れます。そして、その地図を誰よりも持っているのは——長く一緒にいた、家族です。

繰り返しには、意識をそっと別へ

同じ訴えを繰り返すときは、まず寄り添って、それから意識をそっと別のことへ向けます。一般的なことは、穏やかに伝えていい(「今は、デイの時間ですよ」)。全部を正そうとせず、本人が納得できる部分をさがす。それで十分です。

⚠️ 危ないときは、抱えこまないで
ただし、外へ出て行ってしまう(離設りせつ)、食べ物でない物を口にする(異食いしょく)など、本当に危険があるときは、家族だけで抱えこまないでください。ケアマネジャーや主治医に相談を。グループホームや施設という選択肢も、決して「見放す」ことではなく、本人を安全に守るための道です。
🗣️ りはすけのひとこと 認知症の関わりに、「正解」を求めると苦しくなります。今日できたことが、明日できないこともある。それで、いいんです。
否定しない、生活歴を地図にする、意識をそっと別へ——どれも、うまくいかない日があって当たり前。完璧を目指さず、危ないときは専門職を頼る。あなたが倒れないことが、いちばん大事です。

まとめ

  • 「違うでしょ」と否定しない——正しさより安心を
  • その世界を「そうなんですね」と受け止める方が届く
  • 生活歴を地図にすると、語りを受け取れる(家族が一番の地図)
  • 繰り返しは、寄り添って意識をそっと別へ。全部は正さない
  • 離設・異食など危険時は抱えこまず、ケアマネ・主治医へ
この記事はおうちリハの考え方をまとめた一般的な読みものです。認知症の診断・治療・薬の判断は医療の役割です。気になる症状や対応に困るときは、自己判断せず、医師・ケアマネジャー・地域包括支援センターにご相談ください。